人生を変えるのはいつも「勇気の一歩があるから」
──神尾晋一郎×本泉莉奈×稗田寧々インタビュー

『SUN AUDITION』は「演技・歌・ダンスを兼ね備えた声優ガールズユニットのメンバー発掘」を掲げる、「中学卒業以上満25歳までの女性」であれば経験不問の公募型オーディションです。合格者は81プロデュースへの所属と、ユニバーサル ミュージックからのメジャーデビューが決定!指導・育成も81プロデュースが責任を持って務めます。

第一次審査のエントリー〆切は2022年1月26日(水)の23時59分まで!

今回は応募を悩んでいる人、勇気が持てない人のために、声優の先輩3名に「夢への一歩を踏み出したエピソード」を聞いてみました。81プロデュースに所属する神尾晋一郎、本泉莉奈、稗田寧々が当時を振り返って見つめた、「あの時に踏み出したから今の私がある」という体験談。『SUN AUDITION』はもちろん、声優を志す全ての人たちへ贈ります。

いつから声優を目指した?三者三様の「目覚め」ストーリー

──声優を目指したのは何歳くらいの時でしたか?きっかけを教えてください。

本泉:高校3年生で進路を決めなくてはならない時期でした。音楽が好きだったので、音響関係などをはじめ、広く音楽に携われる仕事を見てみようと、まずは専門学校の体験授業に行ってみたんです。憧れの機材などが目の前にあってワクワクしたのですが、「好きなものを好きでいられなくなる瞬間が来たとしたら、音楽を仕事にするのは違うかも」と感じて。

それである時、友達の影響でアニメも観ていて、エンドロールを眺めていたら「声優」というお仕事があるんだ、と気づいて調べ始めたのがきっかけですね。でも、演技経験はなかったので、基礎からお芝居を学べる2年制の専門学校に通い始めました。

学校の勉強だけでなく、それまで黙読していた小説などをあえて声に出してみたり、会話でも相手の目を見て話すようにしたり……もともと社交的な性格ではなかったので、少しずつ演技をすることや人前に立つことへの意識を高めていった時期だったなぁ、と思います。専門学校時代に81プロデュースのことを知って、卒業後に81プロデュースの養成所にお世話になり、2014年からは所属して活動を始めています。

稗田:私は小さい頃から歌うことが好きで、小学校の中学年くらいからはお芝居にも興味を持ちはじめたのもあって、「歌や芝居に関するお仕事ができたらな」と漠然と思っていました。たしか小学生の中学年頃だったのですが、友達たちの間でマンガやアニメが流行り出して、私もすぐ好きになったんです。中学校に上がってからは、声優さんも好きな友達が増えてきて、その子たちと話していくうちに、職業としての声優にも興味が強く湧いてきて。

最初は、遊びで「セリフノート」を作っていました。好きなマンガやアニメ、小説、あとは自分たちの創作でセリフを書き出して、友達と遊び半分に読み合いしてみたり。実年齢には関係ない役柄や男の子の役まで演じていくうちに、声の芝居が楽しくなってきて、中学2年生の終わりくらいから「声優になりたい」と明確に思うようになりました。

他事務所の公募オーディションではうまく結果が出せなかったのですが、高校1年生のときに81オーディションで特別賞をいただくことができました。自分の中では「実力試し」くらいの気持ちで参加したのに、本当にありがたかったですね。ただ、私の通う高校は芸能活動が禁止されていたので、高校時代は1年間だけ週1回クラスの養成所に通い、大学入学後に改めて活動を始めていきました。

神尾:僕が声優を目指したのは29歳と遅く、それこそ『SUN AUDITION』の募集要項からも外れていますから、参考にならないレアケースでよければ……(笑)。

大学院を卒業してから、当時は就職して営業職に就きつつ、マジシャンとしても活動していました。営業先でお客様へマジックを披露していたのですが、多くの方に「マジックもいいけれど、あなたは声が良いわね」と好評だったのは、一つのきっかけかもしれません。

僕にとって営業という仕事では、自分自身が商品の価値を担保できない場合でも、100点のものであるかのように振る舞う場面もあります。それに心苦しさを覚えるなかで、環境を変えるためには「自分が社長になるか、商品になるか」しかないと考えたんです。僕は後者を選びました。自分が商品であれば、その品質は自分自身で担保できますからね。

声優志願者は若い方が多いですから、その中でも「年齢が上である自分のどこに強みがあるだろうか」と自身の価値を見つめました。というのも、サラリーマンから男性声優として大活躍していたのは、当時から諏訪部順一さんなどの例しかなく、あまりに狭き門でした。

そこで、声優業界で活躍しているのは誰か、どういう人がトレンドを生んでいるのか、といった“市場調査”を丁寧にした記憶があります。その結果、理路整然と自分が活動していけそうな説明がついたんです。「ベースの声が低音で、ナレーションをしっかり読める人」はベテランが多く、年齢を重ねても活躍できる領域です。このフィールドなら制作費に余裕がないケースなどに新人の僕を使ってもらえるのではないか、と踏んだんですね。

「声優になりたい」と言葉にすることが、初めの一歩だった

──振り返ってみて、「あの時に一歩を踏み出したから声優としての今がある」と思える体験はありますか?

稗田:私は中学受験をしたときも「この学校に行きたい!」と周りに伝えていたのですが、「公言することで自分が絶対にそれを叶えるしかない」という状況にして、自分に覚悟を決めさせてしまうんです。

両親に声優になりたいことを真剣に伝えたのは、中学2年生のとき。オーディションを受けるためには同意書が必要でしたから、本気を見せるべく便箋7枚分くらいの手紙を書きました!友達や学校の先生にも「声優になりたい」と言っていたので、81オーディションを受けるときも応援してくれて。

養成所に通って、声優としての仕事を頑張っていくときにも、ずっと「声優になりたい」と言ってきた手前、本当になったのなら「活躍しないとかっこ悪い!」と自分の背中を押しているような気持ちで(笑)。その想いのままに、今の私があるなと感じます。

本泉:高校生で進路を決めるとき、「声優を目指したい」と言葉にするのが、実は一番に勇気が要りました。周囲に声優志願者は誰もいませんでしたし、私は福島県の出身でチャレンジするなら上京を伴いますから、両親に伝えなくちゃなりません。そもそも「東京へ行く」というのがもう怖くて!(笑)。

でも、「声優になる」と口にするなら絶対に後戻りしたくなかったんです。両親に仕事として理解をしてもらい、学校に通うための費用などもサポートしてもらわないといけませんでしたから、時間をかけて説得をしたのを覚えています。今の私がここにいるのも、高校生の自分があの時に勇気を振り絞って周りに発信したからですし、それをいろんな方がサポートしてくださったからだと思います。

神尾:ご家族をはじめ、身近なサポーターを巻き込んでいくのは、本当に大事なことですね。その応援って、すごくありがたいから。僕も会社を辞める時が一番に怖かったです。ただ、まだ声優を目指して退職することは伝えていない頃に、上司から呼ばれて、こんなふうに言われたんです。

「社歴を重ねてきて、部下の面倒を見るようにもなってくるだろう。なぁ、神尾よ。男ってのは30歳になったときにやっている仕事こそが、一生の仕事だよ」と。それを聞いて僕は……はっきりと「辞めます!」と決意した(笑)。その上司からすれば、僕の行動は想定外だったとは思うのですが。

社会人経験やこれまでのサラリーを全て捨てて、自分の退路を無くす決意って、要は「逃げる気がない状態」です。選択肢を絞りきって全部潰しても、この道に集中するんだ、という想いはありました。だから誰よりガッついて、メラメラしていましたね。自分を覚えてもらおうと、通りすがる人々にマジックを見せることも忘れずに(笑)。

声優としての一日。いつもの「お仕事ルーティン」は?

──声優になられた後のことも伺わせてください。仕事のある普段の一日は、どういう流れが多いですか?

神尾:朝はいつも6時か7時には起きています。

稗田:早起きなんですね!

神尾:いや、目が覚めちゃうんですよ。老いを感じています(笑)。僕は声の立ち上がりが割に早い方なので、朝にシャワーを浴びながらのどを開けて、滑舌もよくなるように口を動かします。そこからアニメなりナレーションなりで昼間は仕事をして、夜は配信番組に出演するというのがベーシックな一日なのかな。

本泉:私はだいたい収録の3時間くらい前に目覚めて、まずは体を起こして、喉を開けて、ストレッチをします。そこから、空気の乾燥に気をつけつつ水分を摂って、その日の仕事のために声をチューニングします。演じる役にもよるのですが、たとえば子供役だと声を高めのレンジに合わせるために、首の筋肉をほぐしたりするんです。声って喉だけでなく、体のこわばりにも本当に影響されますよね。

アフレコの現場が続いてスキマ時間ができたときは、散歩が好きなのでスタジオの周囲を歩いたりして頭を切り替えています。そんな一日が終わったら、ジムで運動したりサウナへ行ったり、夜は映画を観たりする趣味の時間です。お洋服が好きなので、最近はネット通販が止まりません(笑)。それで元気を得て、「また明日もがんばろう!」ってなります。

稗田:私も収録の3時間前には起きて、シャワーを浴びながら、その日にアフレコするキャラクターのために声の出し方を調整します。それで現場へ行き、だいたい13時から18時までアフレコや収録。空き時間ができたら、私も歩くのが好きなので隣駅まで歩いてみたり。

あとは映画がすごく好きで、現場と現場の間に映画館へ行っちゃうこともあります。映画は今年でも200本以上は観ていますね。洋画も邦画も好きで、吹き替えで見るのも勉強になりますし、同じ映画を何度も観ることもあって。映画館だと没入感が全然違います!

夜は翌日の収録台本のチェックや、「DIALOGUE+」という声優ユニットのメンバーとして活動もしているので、ダンスの練習や振り付けの確認をしたり……という感じなので、寝るのは結構遅めです。

役作りは、キャラクターの背景を知ることから

──声のチューニングというお話もありましたが、キャラクターを演じられる際の「役作り」はどのようにしていますか?

本泉:原作があるものなら原作から入って、オリジナル作品なら台本だけでない情報や資料をいただいて読み込むところから始めます。演じるキャラクターが、どういう人生を歩んできて、どういう環境で育ったのかをさかのぼって、言動にある背景、物事の優先順位決め、言葉遣いの理由といったことを、どんどん自分になじませていく感じです。

とはいえ、いざ現場に入ったら考えすぎずに、掛け合いの会話の中で少しずつ私も調整していって、キャラクターができていきますね。

稗田:私の場合は、これまで演じてきたキャラクターは自分とかけ離れている人物像でないことが多かったので、まずは自分との共通点を軸にして、性格や思考を探っていきます。原作があるなら読んで、演じるキャラクターについて台本に書かれていない部分を重点的にリサーチしますね。オリジナル作品なら資料をいただいて、そこから自分なりのイメージを作っていきます。

これは養成所で教わって守っていることなのですが、現場へ自分が持っていったキャラクター像が必ずしも正解ではない可能性が常にあります。現場でそのズレを指摘されたりしたときに柔軟に対応できるように、あまりイメージを固めすぎてもいけないと思っています。

神尾:準備でいうと、僕がデビューしたときはお仕事をもらえる機会が少なかったですから、台本が手元にあるとずっと練習しちゃっていました。ただ、ある時に「待てよ、今回は何度もこの作品の練習に時間を費やしているけれど、このやり方に慣れてしまうと、将来的に僕は一つの作品にも同じだけの時間を割かないとといけなくなる」と思ったんです。

将来的に忙しくなる予定を見越すのであれば、現状で3時間かかるものに、真正直に3時間をかけてはいられない。もっと効率よく仕事に取り組める方法を見つけなければ、と考えました。たとえば、アニメ作品の内容理解なら、移動時間で台本は精査できなくても、原作を読み進めることならできる。といったように効率よく仕事の隙間を埋めていますね。

稗田:神尾さんが常に先々を見て、行動されているのは本当にすごいです……!

神尾:今は人生の100パーセントを仕事に向けているので、その他の余剰がないからこそ楽しいのもありますし、そういった時間の使い方ができているのかも。

本泉:勉強になります!

オーディションは行動を起こすチャンス!

──最後に『SUN AUDITION』の参加者へ、応援メッセージをお願いします!

神尾:人生にはチャンスはあまり転がっていない、と僕は感じていて。もし、目の前にそれがあり、自分でも興味が湧いて、家族や周囲を説得できる自信があれば、大事なのはオーディションに受かるか否かよりも、「自分が動けるか否か」だと思うんです。

仮に今から1年後に、活躍している人を外から見ているのか、まさに自分がその中にいるのか、どちらがよいのかをたくさん想像して、未来の自分と向き合ってみてほしいです。「私もあの舞台で一緒に踊っている」と明確にイメージができたのなら、このチャンスを逃さずに、ぜひ受けてみた方がいいと思います。心から応援しております。

本泉:「オーディション」ってハードルが高くて、私も受ける度に身構えてしまいます。自分の魅力をどうすれば伝えられるかを、いろいろと頭で考えて緊張しちゃったり、不安になったり……でも、今回のオーディションに興味を持って、ここまで読み進めてきて、この言葉に出会ってくれたあなたは、今まさに勇気を貯めているところだと思うんです。

私も始めの一歩を踏むのはすごく勇気がいりました。でも、思い返してみても、決断したときの大きなエネルギーは、自分の人生においても大切な経験になりました。自分が興味を持てることを見つけるのはとても素敵ですし、そこからこのオーディションを見つけたのも素敵な出会いです。

勇気を振り絞って一歩を踏み出してみたら、今までの自分では見えなかった景色が見られるはずです。初めて挑戦するという経験そのものが、自分の人生にとても大事な財産にもなります。不安もいっぱいだとは思いますが、挑戦を決めたあなたの勇気を大切に、ぜひぜひ応募していただきたいです。お待ちしています!

稗田:私は何事においても「やらない後悔よりやる後悔だ」と信じているので、声優という世界に興味があって、仕事をしてみたいと考えているのなら、迷うよりも飛び込んでみるのを勧めたいです!それに、このオーディションで受かった人たちをいつか見て、「もし私があの時に応募していたら仲間に入れたのかも」と後悔するなんて、イヤじゃないですか。

私は声優という仕事は「好き」の気持ちがないと絶対に成り立たないと思っていて。今はお仕事をしていて、自分には天職だと思えるくらいに楽しいんです。お芝居もそうですし、私が好きな映画に関しても、声優として携わるだけでなくて、ラジオで自分の好きな作品を語ったりとか、自分の「好き」を原動力にしている実感があります。本当にこの時間がずっと続けばいいのに、という強く思います。

私も最初に受けたオーディションは不合格でした。でも、受からなかったからこそ学べることもありますし、得られるものが絶対に何かあるんです。「実力試し」の気持ちでも構いません。変化を起こすためには、まずは自分から動くこと。動かなければ、何も起こりませんから!

人生を変えるのはいつも「勇気の一歩があるから」
──神尾晋一郎×本泉莉奈×稗田寧々インタビュー

『SUN AUDITION』は「演技・歌・ダンスを兼ね備えた声優ガールズユニットのメンバー発掘」を掲げる、「中学卒業以上満25歳までの女性」であれば経験不問の公募型オーディションです。合格者は81プロデュースへの所属と、ユニバーサル ミュージックからのメジャーデビューが決定!指導・育成も81プロデュースが責任を持って務めます。

第一次審査のエントリー〆切は2022年1月26日(水)の23時59分まで!

今回は応募を悩んでいる人、勇気が持てない人のために、声優の先輩3名に「夢への一歩を踏み出したエピソード」を聞いてみました。81プロデュースに所属する神尾晋一郎、本泉莉奈、稗田寧々が当時を振り返って見つめた、「あの時に踏み出したから今の私がある」という体験談。『SUN AUDITION』はもちろん、声優を志す全ての人たちへ贈ります。

いつから声優を目指した?
三者三様の「目覚め」ストーリー

──声優を目指したのは何歳くらいの時でしたか?きっかけを教えてください。

本泉:高校3年生で進路を決めなくてはならない時期でした。音楽が好きだったので、音響関係などをはじめ、広く音楽に携われる仕事を見てみようと、まずは専門学校の体験授業に行ってみたんです。憧れの機材などが目の前にあってワクワクしたのですが、「好きなものを好きでいられなくなる瞬間が来たとしたら、音楽を仕事にするのは違うかも」と感じて。

それである時、友達の影響でアニメも観ていて、エンドロールを眺めていたら「声優」というお仕事があるんだ、と気づいて調べ始めたのがきっかけですね。でも、演技経験はなかったので、基礎からお芝居を学べる2年制の専門学校に通い始めました。

学校の勉強だけでなく、それまで黙読していた小説などをあえて声に出してみたり、会話でも相手の目を見て話すようにしたり……もともと社交的な性格ではなかったので、少しずつ演技をすることや人前に立つことへの意識を高めていった時期だったなぁ、と思います。専門学校時代に81プロデュースのことを知って、卒業後に81プロデュースの養成所にお世話になり、2014年からは所属して活動を始めています。

稗田:私は小さい頃から歌うことが好きで、小学校の中学年くらいからはお芝居にも興味を持ちはじめたのもあって、「歌や芝居に関するお仕事ができたらな」と漠然と思っていました。たしか小学生の中学年頃だったのですが、友達たちの間でマンガやアニメが流行り出して、私もすぐ好きになったんです。中学校に上がってからは、声優さんも好きな友達が増えてきて、その子たちと話していくうちに、職業としての声優にも興味が強く湧いてきて。

最初は、遊びで「セリフノート」を作っていました。好きなマンガやアニメ、小説、あとは自分たちの創作でセリフを書き出して、友達と遊び半分に読み合いしてみたり。実年齢には関係ない役柄や男の子の役まで演じていくうちに、声の芝居が楽しくなってきて、中学2年生の終わりくらいから「声優になりたい」と明確に思うようになりました。

他事務所の公募オーディションではうまく結果が出せなかったのですが、高校1年生のときに81オーディションで特別賞をいただくことができました。自分の中では「実力試し」くらいの気持ちで参加したのに、本当にありがたかったですね。ただ、私の通う高校は芸能活動が禁止されていたので、高校時代は1年間だけ週1回クラスの養成所に通い、大学入学後に改めて活動を始めていきました。

神尾:僕が声優を目指したのは29歳と遅く、それこそ『SUN AUDITION』の募集要項からも外れていますから、参考にならないレアケースでよければ……(笑)。

大学院を卒業してから、当時は就職して営業職に就きつつ、マジシャンとしても活動していました。営業先でお客様へマジックを披露していたのですが、多くの方に「マジックもいいけれど、あなたは声が良いわね」と好評だったのは、一つのきっかけかもしれません。

僕にとって営業という仕事では、自分自身が商品の価値を担保できない場合でも、100点のものであるかのように振る舞う場面もあります。それに心苦しさを覚えるなかで、環境を変えるためには「自分が社長になるか、商品になるか」しかないと考えたんです。僕は後者を選びました。自分が商品であれば、その品質は自分自身で担保できますからね。

声優志願者は若い方が多いですから、その中でも「年齢が上である自分のどこに強みがあるだろうか」と自身の価値を見つめました。というのも、サラリーマンから男性声優として大活躍していたのは、当時から諏訪部順一さんなどの例しかなく、あまりに狭き門でした。

そこで、声優業界で活躍しているのは誰か、どういう人がトレンドを生んでいるのか、といった“市場調査”を丁寧にした記憶があります。その結果、理路整然と自分が活動していけそうな説明がついたんです。「ベースの声が低音で、ナレーションをしっかり読める人」はベテランが多く、年齢を重ねても活躍できる領域です。このフィールドなら制作費に余裕がないケースなどに新人の僕を使ってもらえるのではないか、と踏んだんですね。

「声優になりたい」と言葉にすることが、初めの一歩だった

──振り返ってみて、「あの時に一歩を踏み出したから声優としての今がある」と思える体験はありますか?

稗田:私は中学受験をしたときも「この学校に行きたい!」と周りに伝えていたのですが、「公言することで自分が絶対にそれを叶えるしかない」という状況にして、自分に覚悟を決めさせてしまうんです。

両親に声優になりたいことを真剣に伝えたのは、中学2年生のとき。オーディションを受けるためには同意書が必要でしたから、本気を見せるべく便箋7枚分くらいの手紙を書きました!友達や学校の先生にも「声優になりたい」と言っていたので、81オーディションを受けるときも応援してくれて。

養成所に通って、声優としての仕事を頑張っていくときにも、ずっと「声優になりたい」と言ってきた手前、本当になったのなら「活躍しないとかっこ悪い!」と自分の背中を押しているような気持ちで(笑)。その想いのままに、今の私があるなと感じます。

本泉:高校生で進路を決めるとき、「声優を目指したい」と言葉にするのが、実は一番に勇気が要りました。周囲に声優志願者は誰もいませんでしたし、私は福島県の出身でチャレンジするなら上京を伴いますから、両親に伝えなくちゃなりません。そもそも「東京へ行く」というのがもう怖くて!(笑)。

でも、「声優になる」と口にするなら絶対に後戻りしたくなかったんです。両親に仕事として理解をしてもらい、学校に通うための費用などもサポートしてもらわないといけませんでしたから、時間をかけて説得をしたのを覚えています。今の私がここにいるのも、高校生の自分があの時に勇気を振り絞って周りに発信したからですし、それをいろんな方がサポートしてくださったからだと思います。

神尾:ご家族をはじめ、身近なサポーターを巻き込んでいくのは、本当に大事なことですね。その応援って、すごくありがたいから。僕も会社を辞める時が一番に怖かったです。ただ、まだ声優を目指して退職することは伝えていない頃に、上司から呼ばれて、こんなふうに言われたんです。

「社歴を重ねてきて、部下の面倒を見るようにもなってくるだろう。なぁ、神尾よ。男ってのは30歳になったときにやっている仕事こそが、一生の仕事だよ」と。それを聞いて僕は……はっきりと「辞めます!」と決意した(笑)。その上司からすれば、僕の行動は想定外だったとは思うのですが。

社会人経験やこれまでのサラリーを全て捨てて、自分の退路を無くす決意って、要は「逃げる気がない状態」です。選択肢を絞りきって全部潰しても、この道に集中するんだ、という想いはありました。だから誰よりガッついて、メラメラしていましたね。自分を覚えてもらおうと、通りすがる人々にマジックを見せることも忘れずに(笑)。

声優としての一日。
いつもの「お仕事ルーティン」は?

──声優になられた後のことも伺わせてください。仕事のある普段の一日は、どういう流れが多いですか?

神尾:朝はいつも6時か7時には起きています。

稗田:早起きなんですね!

神尾:いや、目が覚めちゃうんですよ。老いを感じています(笑)。僕は声の立ち上がりが割に早い方なので、朝にシャワーを浴びながらのどを開けて、滑舌もよくなるように口を動かします。そこからアニメなりナレーションなりで昼間は仕事をして、夜は配信番組に出演するというのがベーシックな一日なのかな。

本泉:私はだいたい収録の3時間くらい前に目覚めて、まずは体を起こして、喉を開けて、ストレッチをします。そこから、空気の乾燥に気をつけつつ水分を摂って、その日の仕事のために声をチューニングします。演じる役にもよるのですが、たとえば子供役だと声を高めのレンジに合わせるために、首の筋肉をほぐしたりするんです。声って喉だけでなく、体のこわばりにも本当に影響されますよね。

アフレコの現場が続いてスキマ時間ができたときは、散歩が好きなのでスタジオの周囲を歩いたりして頭を切り替えています。そんな一日が終わったら、ジムで運動したりサウナへ行ったり、夜は映画を観たりする趣味の時間です。お洋服が好きなので、最近はネット通販が止まりません(笑)。それで元気を得て、「また明日もがんばろう!」ってなります。

稗田:私も収録の3時間前には起きて、シャワーを浴びながら、その日にアフレコするキャラクターのために声の出し方を調整します。それで現場へ行き、だいたい13時から18時までアフレコや収録。空き時間ができたら、私も歩くのが好きなので隣駅まで歩いてみたり。

あとは映画がすごく好きで、現場と現場の間に映画館へ行っちゃうこともあります。映画は今年でも200本以上は観ていますね。洋画も邦画も好きで、吹き替えで見るのも勉強になりますし、同じ映画を何度も観ることもあって。映画館だと没入感が全然違います!

夜は翌日の収録台本のチェックや、「DIALOGUE+」という声優ユニットのメンバーとして活動もしているので、ダンスの練習や振り付けの確認をしたり……という感じなので、寝るのは結構遅めです。

役作りは、キャラクターの背景を知ることから

──声のチューニングというお話もありましたが、キャラクターを演じられる際の「役作り」はどのようにしていますか?

本泉:原作があるものなら原作から入って、オリジナル作品なら台本だけでない情報や資料をいただいて読み込むところから始めます。演じるキャラクターが、どういう人生を歩んできて、どういう環境で育ったのかをさかのぼって、言動にある背景、物事の優先順位決め、言葉遣いの理由といったことを、どんどん自分になじませていく感じです。

とはいえ、いざ現場に入ったら考えすぎずに、掛け合いの会話の中で少しずつ私も調整していって、キャラクターができていきますね。

稗田:私の場合は、これまで演じてきたキャラクターは自分とかけ離れている人物像でないことが多かったので、まずは自分との共通点を軸にして、性格や思考を探っていきます。原作があるなら読んで、演じるキャラクターについて台本に書かれていない部分を重点的にリサーチしますね。オリジナル作品なら資料をいただいて、そこから自分なりのイメージを作っていきます。

これは養成所で教わって守っていることなのですが、現場へ自分が持っていったキャラクター像が必ずしも正解ではない可能性が常にあります。現場でそのズレを指摘されたりしたときに柔軟に対応できるように、あまりイメージを固めすぎてもいけないと思っています。

神尾:準備でいうと、僕がデビューしたときはお仕事をもらえる機会が少なかったですから、台本が手元にあるとずっと練習しちゃっていました。ただ、ある時に「待てよ、今回は何度もこの作品の練習に時間を費やしているけれど、このやり方に慣れてしまうと、将来的に僕は一つの作品にも同じだけの時間を割かないとといけなくなる」と思ったんです。

将来的に忙しくなる予定を見越すのであれば、現状で3時間かかるものに、真正直に3時間をかけてはいられない。もっと効率よく仕事に取り組める方法を見つけなければ、と考えました。たとえば、アニメ作品の内容理解なら、移動時間で台本は精査できなくても、原作を読み進めることならできる。といったように効率よく仕事の隙間を埋めていますね。

稗田:神尾さんが常に先々を見て、行動されているのは本当にすごいです……!

神尾:今は人生の100パーセントを仕事に向けているので、その他の余剰がないからこそ楽しいのもありますし、そういった時間の使い方ができているのかも。

本泉:勉強になります!

オーディションは行動を起こすチャンス!

──最後に『SUN AUDITION』の参加者へ、応援メッセージをお願いします!

神尾:人生にはチャンスはあまり転がっていない、と僕は感じていて。もし、目の前にそれがあり、自分でも興味が湧いて、家族や周囲を説得できる自信があれば、大事なのはオーディションに受かるか否かよりも、「自分が動けるか否か」だと思うんです。

仮に今から1年後に、活躍している人を外から見ているのか、まさに自分がその中にいるのか、どちらがよいのかをたくさん想像して、未来の自分と向き合ってみてほしいです。「私もあの舞台で一緒に踊っている」と明確にイメージができたのなら、このチャンスを逃さずに、ぜひ受けてみた方がいいと思います。心から応援しております。

本泉:「オーディション」ってハードルが高くて、私も受ける度に身構えてしまいます。自分の魅力をどうすれば伝えられるかを、いろいろと頭で考えて緊張しちゃったり、不安になったり……でも、今回のオーディションに興味を持って、ここまで読み進めてきて、この言葉に出会ってくれたあなたは、今まさに勇気を貯めているところだと思うんです。

私も始めの一歩を踏むのはすごく勇気がいりました。でも、思い返してみても、決断したときの大きなエネルギーは、自分の人生においても大切な経験になりました。自分が興味を持てることを見つけるのはとても素敵ですし、そこからこのオーディションを見つけたのも素敵な出会いです。

勇気を振り絞って一歩を踏み出してみたら、今までの自分では見えなかった景色が見られるはずです。初めて挑戦するという経験そのものが、自分の人生にとても大事な財産にもなります。不安もいっぱいだとは思いますが、挑戦を決めたあなたの勇気を大切に、ぜひぜひ応募していただきたいです。お待ちしています!

稗田:私は何事においても「やらない後悔よりやる後悔だ」と信じているので、声優という世界に興味があって、仕事をしてみたいと考えているのなら、迷うよりも飛び込んでみるのを勧めたいです!それに、このオーディションで受かった人たちをいつか見て、「もし私があの時に応募していたら仲間に入れたのかも」と後悔するなんて、イヤじゃないですか。

私は声優という仕事は「好き」の気持ちがないと絶対に成り立たないと思っていて。今はお仕事をしていて、自分には天職だと思えるくらいに楽しいんです。お芝居もそうですし、私が好きな映画に関しても、声優として携わるだけでなくて、ラジオで自分の好きな作品を語ったりとか、自分の「好き」を原動力にしている実感があります。本当にこの時間がずっと続けばいいのに、という強く思います。

私も最初に受けたオーディションは不合格でした。でも、受からなかったからこそ学べることもありますし、得られるものが絶対に何かあるんです。「実力試し」の気持ちでも構いません。変化を起こすためには、まずは自分から動くこと。動かなければ、何も起こりませんから!

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